まだダンスは済んでない

非・売れ線系ビーナス 「踊りに行かないで」
作:田坂哲郎/演出:木村佳南子/ドラマドクター:羊屋白玉(指輪ホテル)

@中野劇場HOPE

 あなピグモ捕獲団、万能グローブガラパゴスダイナモス、劇団ぎゃ。…と、福岡の劇団は変わった名前が多い。「これからは福岡だ」と僕の内なる声が囁くので、行ってきました非・売れ線系ビーナス。僕も初見だし向こうも東京初公演。

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Because it is over now.

五反田団 「迷子になるわ -GOING ON THE WAY TO GET LOST-」
作・演出:前田司郎

@池袋東京芸術劇場・小ホール1

 芸術家は確固たる信念とかコンセプト、主題主義主張、そんなものを持っていなければならない、ということに、どうやらなってしまっているご時世。高尚さの土手っ腹に風穴あけるようなタイトル通りの自主的迷走。

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ワイヤレスな関係

ロロ 「いつだっておかしいほど誰もが誰か愛し愛されて第三小学校」
作・演出:三浦直之

@新宿眼科画廊

 再演だからといって「初演よりよかった」とか「初演のほうがよかった」とかいうのは野暮ですが、それでもやっぱり、この瑞々しさには驚かされる。じわじわと好きになる、ってことができない作品だと思うのです。一目惚れ・オア・ダイ。それはロロがストーリーの流れではなく瞬間瞬間にクライマックスをぱんぱんに詰め込んでいるからで、クライマックスをクライマックスで挟みこんで60分もの厚みになった特大アメリカンクラブハウスサンドみたいな固まりを口の中に突っこまれたなら、そりゃあもう感電したように泣くしかない。

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鬱血狂時代

宇宙マナー×早稲田大学演劇倶楽部 「いつか床が見える伝説」
作・演出:萩野あやこ

早稲田大学学生会館B203

 同じく床が見えない部屋に棲む僕にとって、このタイトルの蠱惑的な響きにはすぐピンときたし、チラシの文章をさわりだけ読んだ時点で勝算(きっと見たいものが見られるという勝算)はあった。

あの日とろけたキュウリ、傷めつけた牛乳、腐らせた大根。
かつて米と呼ばれていたもの。玄関で追い返した友人。
部屋を見るなりUターンで実家に帰った母親。
あの梅雨、あの湿り気。
あの犬、あの川、あの弁当、あのアボカド、あの手紙、あの神社、あのスカート、
あの月、あのネックレス、あの故郷、あのサイト、あのメール、あの約束!

 片付けられないのは、部屋だけじゃなかった。

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