言い遺したことがある

犬と串 「ZOMBIE」
作・演出:モラル

早稲田大学大隈講堂裏劇研アトリエ

 厳密なルーツまで辿ると多分違うんでしょうけど、一般的な見解*1としてゾンビって要は幽霊の一種であって、つまりは現世に執着があるということ。そう考えると実に深い脚本だなあ、などと思うのですが、次第にそれすらどうでもよくなってゆく展開。そして、どうでもよくなってグラグラになってるはずの琴線を容赦なくバシバシ叩いてくる、号泣と紙一重の笑い。
 四面囲み舞台ともなれば自ずと動けるエリアは狭くなってしまうわけですが、それを物ともしない強靭なスケール感が犬と串にはあるのです。小さな空間に押し込めても倍の強さで跳ね返してくる、劇場全体を巨大アスレチックと化してしまう広がりが。客いじり基本NGな僕(わが身にさえ降りかからなければ演出自体はOK)としては万一の場合を想定して最前列を避けたつもりが、どういうわけか結果として最も危険な席に座ってしまっていて思わず疎みあがった。だって普通そこにそんな仕掛けがあるなんて、ねえ?

*1:何をもって一般的とするか、という議論もあるでしょうけど、キリがないのでここは「回復呪文でダメージ」を一般的な見解とします。