ループする十年屋敷

ろりえ 「女優(おんなやさしい)」
作・演出:奥山雄太

@池袋シアターグリーン BOXinBOX THEATER

 「おんなのこにやさしい演劇ユニット」のキャッチコピーに真正面から答えてみせた、ろりえの代表作のひとつになりうる2時間50分の超大作。それでもなお、まだあと1時間くらい見ていたかったと思わせるほどの完成度。そして「たまに切ない」との言にも完璧に応えてみせた、とてつもなく濃度の高いホームドラマ
 主人公ふたりのネーミングから脇役の人物設定に至るまで、とことん適当で投げっぱなしで整合性とかリアリティとか全然気にしてなさそうなくせに、その場その場で湧き上がる感情がいちいちリアル。映像の写るスクリーンの画角が遺影のように削り取られてたり、吐瀉物の量が引くのを通り越して笑えるのを通り越してもう一回引くくらいの量だったり、すっとぼけた遣り取りの合間に粘っこくて黴臭い土の匂いが忍びこんでくる感触。常にナンセンスと腐臭が隣り合わせていて、笑いそうになると冷水を浴びせ、泣きそうになるとくすぐり、感情のバロメーターを絶対に静止させてはくれない。
 ただし、「最後まで正気を保っていられない」という条件付きでなら、これは超弩級のエンターテインメント作品だとも思うのです。みんなで気が狂れたように泣いたり笑ったり感動したりすればいい。