白井劇団「思い出をこぼさぬように」
作・演出:吉田つるり

@吉祥寺・櫂スタジオ

 白井劇団の劇場はいつも、駅前や中心部から少し離れた、いい感じに辺鄙なところにあります。そして僕はそんな劇場に、毎回下調べもせず行こうとするので道に迷ってばかりです。今度こそは一度行った場所だからと油断していたら曲がる道をひとつ間違って、吉祥寺ミニ・オリエンテーリング状態。
 で、内容なんですが、今年見てきた中で一、二を争うくらい面白かった。というより、いまだに自分でもよくわかっていない「好きなタイプの芝居」のツボというものを、ことごとく押されてしまったような感じなのでした。ネジが5、6本外れたような世界観の、そのネジ穴にネジじゃない何かを無理矢理詰めてみました、みたいな。陰があるくせにデタラメで、実はものすごい悲劇なのかもしれない話が、もはやシュールなのかどうかさえ解らないほどのハチャメチャな人物設定と展開で中和されて、あとにはただ楽しさしか残らないのが素敵。