たかが本されど本だって本これも本

「これは本ではない」
〜ブック・アートの広がり

うらわ美術館

 タイトルから薄々感づいていたとおり、入口すぐにルネマグ(リット)の「これはパイプではない」が。しかしその直後に置かれた「『これは本である』というタイトルの本」が僕らの既成概念を一旦どろどろに溶かします。陶土で巨大な少年ジャンプを再現したり、かと思えばファーブル昆虫記を蝋で固めて水に浮かべてみたり、北斎の著書にハツカダイコンの種添えて丸ごと鉛で包んでみたり、コンテナいっぱいに積み上げられた書物を丸ごと消し炭にしてみたり、まー誰も彼も好奇心・欲望に素直だこと。
 渡辺英司『蝶瞰図』は美術館の大空間でこそ体感必須。説明聞いたり目録眺めるだけでは絶対に辿り着けない、江戸川乱歩でいうと「鏡地獄」の世界。ミニマル昆虫好きにおすすめ。
 西村陽平作品(タイトル失念)、「岩波の文庫本を陶芸用の窯で焼いてみた」という製作動機の純真さだけで白飯おかわり可能。どうやら窯の説明書に「本を焼くな」とは書かれてなかったんだろうなあ。そして西村氏は藝術論云々以前に岩波文庫を窯で焼きたかったんだろう。やってみたかったからやってみました、が一番美しい。理屈や理論なんか後付けでいいんです。