なんだこれは

白井劇団 「香りEXPRESS」
作・演出:吉田つるり

@阿佐ヶ谷アートスペースプロット

 劇場近辺で大いに迷う。アルシェとかアルスノーヴァとかアルテパティオとか、アで始まるアサガヤの小劇場は見つかりにくい場所にひっそり扉を開いていることが多いですが、おそらくそのなかでもトップクラスのわかりづらさじゃなかろうか。まさに隠れ家的な場所。まあ、これも醍醐味ですが。初めて行く劇場までの道のりの、あのヒリヒリするようなワクワク感はなんなのでしょう。初めて遊びに行く友達の家にも似て。
 いつもどおりの、いや、いつも以上のてんやわんや。無駄と唐突と破綻だけしかないのに、なぜか成立しちゃってるストーリー。徹夜で並べたドミノを不注意で倒してしまったときに込みあげてくる、そんなふうな笑い。
 なにより恐ろしいのは、旗揚げから全作品見ているのになお、いまだにわからない『ミスなのか演出なのか』のライン。不自然な間も、あぶなっかしいドタバタも、明らかに噛んだであろうセリフでさえも、この世界観の前では単なるオモシロギャグの一種に変わり、プラスにしか働かなくなるのです。つまり、トチるという概念が消えた演劇。こんな恐ろしい発明があるでしょうか。