劇を見た/犬を聞いた

Hula-Hooper「何かのプレイバック」
 原作っぽいもの:ルイ・ザ・メイ・オルコット『若草物語
 作・演出・振付:菊川朝子
@下北沢OFF・OFFシアター

 見にいこうか、どうしようか、とモタモタ悩んでる間に終わってしまった前作「何かのプレイ」の続編だそうです。
 若草物語の名のもとに、「面白ければそれでいいんだよ」を合言葉に、楽屋まる見え、配役ローテーション制、ことあるごとに意味なしダンス、ただ歌いたいだけかもしれないドリカムメドレー、の合間に自己批判を挟みつつ、原作にいない登場人物が発覚したり、演劇って何だろうという壁にぶち当たったり、ラストシーンを用意してなかったり…普通なら収拾つかなくなりそうなほど、やりたいことを全部ぎゅうぎゅう詰めにした、密度の高い90分。
 あの、終盤でけっこう静かなシーンが続くんですよ。それまではずっと音楽(ほとんどドリカム)が流れっぱなしなんで気にならなかったんですが、劇場の防音だって完璧じゃないわけで、かすかに壁ごしに犬の泣き声が聞こえてくるんです。2、3匹。そりゃあもう悲しそうな声で。なんだかんだで5分近くひっきりなしにオォーンオォーン鳴いていて、あんまり長いからひょっとしてこれも仕込みなのかと思ったくらいなんですが。いったん意識してしまうと面白くて仕方なく、そんなの反則だろとは思いながらも、あの絶妙のタイミングで犬が鳴いたのが偶然なら『運も実力のうち』、そしてやっぱり「面白ければそれでいいんだよ」と、あらためて思うのでした。