うっかりさんとタイムリミット

 小道具作業が追い上げにかかってきて、いよいよ部屋の中がものすごいことになっています。ただの「だらしない人」ごときには到底ここまで散らかせまい。ましてや自慢することではない。
 当初の計画では難なく完成する運びだった22日披露予定の小道具、先週の土曜日にスズナリの客席で開演待ちをしている最中に、「あっそういえばあれじゃ大きすぎて邪魔なんじゃないか」という思いが頭をよぎり、急遽、そこまでの過程をリセット、新たにプラン立てと買い出しに奔走する羽目になったのでした。もう失敗はできません(時間的に)。そもそもなんで「大きすぎて邪魔だ」というような基本的なことを見落としていたのか自分でもわからない。ましてや、その追い込みの隙間を縫って蛍細工の芝居をしっかり楽しんできた自分を褒めたり叱ったりしてやりたい。
 ところで、いちばん頭を悩ませたのが小道具に仕込んだギミック部分。ここに関して演出家からはただ一言、「面白く作ってください」としか言われていません。「面白ければ何でもOK」真理、だとは思いますが、しかしこれを実行するのには並大抵じゃない勇気が要ります。まず「面白ければ」という条件を満たすのが非常に難しい。きっと主語がないからなのでしょう。「面白ければ何をやってもいいと思ってるのか!」みたいな憤慨をしている人は、たいてい「自分にとって面白くないこと」をされたから怒っているのであって、「面白ければ」やっぱり何をやってもきっと許してくれたに違いないだろうし、逆に「面白ければ何をやってもいいんだ!」と開き直るには、見る人全員が面白いと思うものを作る必要がある。一人一人の好みはぜんぜん違うのに、です。なにを言ってんだか自分でもわからなくなってきたけれど、少なくとも「僕にとって」面白いもの、は作ったつもり。