ライブ地獄百景

ロリータ男爵「エプロンの証」
作・演出:田辺茂範

下北沢駅前劇場

 おそらくは日本屈指の「領収書もらいにくい劇団名」のひとつであろうロリータ男爵。近ごろ田辺さんとはあちこちの劇場で(観客どうしとして)偶然お会いする機会が多かったものの、考えてみれば本公演を見るのは今回が初なのでした。ENBUゼミ卒業公演とプロデュース公演と、あとはせいぜい噂レベルでしか聞いたことのなかった男爵の本領発揮、堪能してきました。
 まず初めに断っておかなきゃならないのは、僕は基本的には客いじりNGの子だという事実。まあ、ベタポも客にべとべとの飴玉を手渡したり、客席と糸電話で会話したり(一方的に)するような団体ですから、そんなところに所属する僕がこんな事言うのもなんなんですが、残酷なこと言っちゃえばそれは仕掛ける側だから平気なわけで、仕掛けられる側に立ったなら僕は客いじり断固反対派ですよ(身勝手)。役者がこちらに近づいてこようものなら即刻顔を伏せ、俺に構うなよというオーラを全身から発して回避します。
 駄目でした。そんな生ぬるい根性を、田辺さんは許してくれません。たとえば終盤の、ロボットたちが一斉に暴走しはじめるシーン。それぞれに種類の違う客いじりが同時に8人くらい(こわくてちゃんと数えられなかった)乱入するもんだから、物は飛んでくる頭は叩かれる、脇はくすぐられる、意味不明の説教もされる。ただ顔伏せて耐えてりゃ済むなんて次元じゃありません。体感時間にして約15分。そして僕らはこの大混乱の中で、自分の力で働こうとするニート(彼が働きさえすれば暴走が止まるという設定)を心から応援したくもなるのです。つくづく計算しつくされた構成だ、なんて考える余裕ができたのは解放されてからの話。