見えない鍵盤をたたくのだ

テルミン大学 演奏発表会
教授:佐藤沙恵

@五反田アトリエヘリコプター

 入場無料にひかれて行ってみる。とはいえ僕とテルミンの因縁はけっこう深く、むかし通販で7500円(テルミンのなかでは安物の部類)のものを衝動買いして工学部生の友人に自慢気に見せたら「これなら2000円あれば自作できる」と言われた苦い思い出があるのでした。
 詳しい仕組みは省きますが、楽器に触らずに演奏する(逆に、触っているかぎり音は出ない)テルミンの音には否応なくその人の個性が出る、というのが発表会の最大の発見でした。指定された鍵盤さえ叩けば誰もが百発百中で正確なドレミファソラシが奏でられるピアノなどとは違い、初心者には音階ひとつつかむことさえ至難の業。指のサイズとか発表への意気込みとか緊張感とか、そういう個人情報が全部ひっくるめて一個の音になって出てくる面白さ。いわば、パントマイムと音響を兼任している状態。で、演奏が上手な人の動きはやっぱり美しくみえるのです。