小道具に必要なある種の演技力

 公演終わって、一息ついて。一般市民的な日常の感触に戻る前にとイソイソと作った品物を、くねくねし小道具チームの方へと受け渡しにゆく。
 前回のギター型チェーンソーにひきつづき、全長1m以上ある小道具です。なんだか一部の劇団からは僕が大きい小道具を作りたがっているみたいな誤解を受けていますが、それはあなたがたがそういうものばかり台本に書いちゃうからですよ。僕はどちらかといえば小さい小さい小道具の、しかも客席からじゃ絶対見えないような細部にばかり凝るのが好きなのです。目ざとく見つけてくれた人だけのお楽しみとして。
 それに、あれだ。現実問題として、大きい小道具は持ち運びが不便だ。稽古場への行き帰りの道中で、電車内で、いろんな視線に耐えなくちゃならないし。完成したものを人に預けるのさえ申し訳なく思うくらいですから。
 ましてや、待ち合わせ時刻の20分も前に到着してしまった僕はこれ持って駅前でどんな顔して立ってりゃいいのか。なんとかして、そしらぬ表情で「普段からこういうもの持ち歩いてる人」になりきりたいけれど、僕にはまだ、あまりに修業が足りなさすぎます。