黒メルヘンと赤キッチン

鶴を食べるのは個人の自由


 奈落の存在しない劇場に奈落をでっち上げ、舞台セットを組むことなしに荘厳な螺旋階段と吊り舞台を据えた「裸のキャンドル」、無事終演いたしました。ありがとうございました。カナシイながらもハッピーエンドだった過去3回と比べ、いつになく暗黒童話感満載でお届けした今回ですが、いかがでしたでしょうか。
 僕は、満足しています。今回は特に、作りたいものしか作らなかった気がしていますから(主に鶴)。稽古を通して役者から感情のポテンシャルを引きずり出すのが成島氏の演出法ですが、一介の小道具でしかないはずの僕も、いつのまにか『血を見るのが意外と好き』という、自分でも知らなかったポテンシャルを引き出されてしまっていたようです。近所のスーパーの店員から『お前どんだけ食紅買うんだよ』と言いたげな目で見られたことも、いずれは思い出になるのだろうか。
 劇場バラシはとうに終わりましたが、自分の家の後片付けが残っています。これから真っ赤に染まった流し台の掃除を始めるのです。あのラストシーンが、もう一度我が家で再現されるというわけ。