最下位からの急浮上

デス電所 「夕景殺伐メロウ」
作・演出:竹内佑

下北沢駅前劇場

 実は、かれこれ7年くらいに及ぶ僕の観劇歴の中、ぶっちぎりのワーストワンとして長らく殿堂入りを続けているのが他ならぬデス電所の『WORLDS END SAYONARA』という作品でして。もう昔のことすぎて何がどう面白くなかったのかも忘れてしまってるんですが。以来しばらく、五年ほど敬遠気味だったんですが、ここ最近の評判の良さと今回のチラシのセンスの素晴らしさに「もう一回くらいなら」と行ってまいりまして、まいりましたと言ってまいりました。見違えるとはまさにこのこと。
 音響、ではなく演奏スタッフが最前列に待機しているトリッキー。買ったばかりのキーボードに役者がみかんを叩きつけるというアドリブの嫌がらせを受け、暗転中に必死で果汁を拭き取ってる姿が視界に入ってきて笑う。
 あと、月日が経って冷静になって見ると、このひとたちは『空回る』ことを全く恐れてないんだなと気づく。ためらわない。一度始めてしまったネタは何があっても最後までやりきる。客席の反応ごときで声ちっちゃくなったり動きが中途半端になったりしない。すべったらすべったで、その事実ごと巻き込んで正面突破する。そうやって開演直後から1時間以上かけて設定もあらすじも好き勝手に壊して壊して、更地になったところへゼロから建て直すメロウ。
 やけに長々と書いてしまったのは興奮してるから。嫌いだったはずのものが好きになった瞬間のリバウンドの衝撃は大きい。