多重人格三人芝居/おもしろくやしい

クロムモリブデンマトリョーシカ地獄」
作・演出:青木秀樹

@新宿サンモールスタジオ

 純粋な(裏の心配を一切しなくてよい)観劇行為はスロウライダー以来、実に一ヶ月ぶり。本当は5月中旬まで現場漬けで観劇に身動きのとれる隙間もあまりなく、二ヶ月近く演劇禁欲期間*1をおくつもりだったんですが、ちょっとした縁あって故あって訳あってクロムモリブデン、どうにかスケジュールこじ開けて、行く。
 東京で久しく味わっていない、関西的(の中でもズバ抜けて異端な)言語センスが容赦なく炸裂。毎度のことながら台本まるまる1ページすっ飛ばしたんじゃないかと思うほど飛躍したり唐突すぎたりする展開も、あのグルーヴィー文体のおかげで難なく理解できる、流れについて行ける不思議。
 そして、尋常でない小道具の量に驚き、それぞれのクオリティに目を奪われ、それを作ってるのが役者だという事実に愕然となる。役者には小道具を作る負担を減らして演技に集中できるようになってほしい反面、役者もできてあんな小道具まで作られたんじゃ僕の立場はどうなるんだという僻みも交錯して、膝の小刻みな震えが止まりません。ラストシーンに目を凝らす客席の中、ひたすら視線が象の頭にばかり向いていたのはきっと僕だけだと思う。

*1:そうは言いつつも稽古場にいて稽古見てるわけだから全然『演劇禁欲』ではないんですが。