超変則リーディング公演

危婦人×アトリエタンタン共同企画 『これも、愛。それも、愛。』

危婦人 「贋作 チロルの秋」
原作:岸田國士『チロルの秋』 脚本・演出:スギタクミ

@渋谷Gallery LE DECO 3

 おそらく演劇のクレジットにおいて小道具以上に見かけないセクション、『切り絵』を前面に出した企画公演。もともと劇場じゃなくてギャラリー用の場所とはいえ、素舞台に切り絵を貼るだけでこんな絢爛空間に仕上がるものかと驚く。その気になれば切り絵なんて誰にでもできるし、だからこそ「これを作るのにどれくらいの労力がかかるのか」素人目にも概算できてしまう巨大作品群のインパクトは格別なのです。
 原作に馴染みのない人や読んだことのない人(かくいう僕もその一人)でも簡単に入っていける、いや、むしろそういう人たちをこそターゲットにした見事な導入術。集中すればするほど役者ではなく手元に目が行ってしまうのが難点ではあるけれど、それでもやっぱり「古典をつつく」とでもいうような細部までの愛あるツッコミ、原作を壊さない範囲で壊しまくる(非破壊検査的な)やり方、ただただ純粋に、いいなあと思う。前回のタウンホールから一転しての小空間・少人数芝居、この距離で見ると照れる。