ジャックナイフを持ったガンジー

The end of company ジエン社 「無抵抗百貨店屋上遊園地
脚本・演出:作者本介

@神楽坂die pratze

 以前も少し書いたと思うんですが、僕は1980年生まれで、つまり1999年には19歳で、2000年に20歳を迎えるはずの年齢で、だからこそ人一倍ノストラ某氏の予言には敏感でした。ハタチになる前に、すなわち『おとなになる前に世界が終わる』という事態を前にした人が思うのは「後悔のないように今を精一杯生きる」か「どうせみんな死ぬんだから将来なんて考えるだけ無駄」のどちらかであり、当時の僕は後者なのでした。後者の人間が1999年7の月を通り過ぎてしまったあとに感じるもの、それは、絶望です。乱れた日本語でいうなら『逆に絶望』です。生きることは喜び、のはずが、まるで巧妙な詐欺にあったみたいに、不当な残業を言い渡されたみたいに、ちょっとちょっと嘘でしょ生きのびちゃったよ、これから先どうすりゃいいの?
 この感覚、僕と同い年か年下の人、つまり「成人前にタイムリミットが来てしまうはずだった」人たちなら多少なりともあるんじゃないかとは思いつつ、今まで面と向かって尋ねたことはなかったのですが、劇中あきらかにわざと何度も繰り返されるように83年生まれ25歳ばかりが登場するジエン社の芝居は、その「生きちゃった人生」の延長線上に置かれた爆弾のよう。世界の終わりさえ嘘だった以上、このうえ何があっても不思議はないし驚かないし受け入れちゃうし戦わないし、どこまでも無気力・無抵抗・無感動で、現実に牙をむくどころか無条件全面降伏。だけど、ちょっとでも現実が隙を見せたなら、高々と掲げた白旗を槍のように振り回して正面突破しそうな気配だけは漂いまくっている。しかも、これだけ思想先行型(まあ、単に僕が過剰反応しているだけかもしれませんが)にもかかわらず、しっかり「楽しめる」つくりになっているのが素晴らしい。