骨格公開

こゆび侍 「ドン・キホーテの恋人」/ワーク・イン・プログレス公演
作・演出:成島秀和

王子小劇場

 中間発表的な意味合いをもつ一日だけのプレ公演。舞台美術や小道具はほとんど使わないので、僕は何食わぬ顔して客席でスタンバイ。
 最後に見た稽古から3日しか経過していないというのに、脚本はあちこち大幅な変更が加えられており、実質初めて見るに等しい新鮮さで純粋観劇に耽る。思えばこうして成島氏の作品を「外側」から眺めるのも初めてなのでした。嘘が本当になり本当が嘘になり、嘘を本当だと勘違ってみたり、嘘と本当が判らなくなったり、あるいは本当に嘘だったんだと気付いたりする、そんな瞬間へ向かう道のりを、もしくはそこから出てゆく足どりを、薄氷の上を素足で歩くような張りつめた空気と凍傷寸前の静けさで描くファンタジー
 終演後のフィードバック(対談形式)で面白いように両論割れた賛否も、そのどちらにも共感できる、などと言ったら何も考えてないみたいだけれど、やはり論拠のはっきりした口頭による感想というのは骨身に染みるものです。全員を等しく納得させるものなど作るのは不可能*1と知った上で、それでも全員を等しく納得させうるものを目指して作らねばならない。辛いか辛くないかで聞かれれば辛いけど、楽しいか楽しくないかと聞かれれば楽しいと答えざるをえない、さながらイバラの道のピクニック。そしてどうやら僕の2008年は、世間の皆様より13日遅れでやって来そうな気配。

*1:だって、そんなものがあるのなら、誰も無理してオリジナリティなんて模索する必要もないし、そればかり上演して、そればかり観に行けばいいってことになってしまう。