すべては箱に入っている

Ugly duckling 「箱師よ、その町の暁に釘を打て。」
作:樋口美友喜/演出:池田祐佳理

ザムザ阿佐ヶ谷

 捨てて生まれて引き籠って置き去ってたらい回してすり替えて口を揃えて積み上げて崩して泣いて祈ってじっと待つ。
 舞台には木枠ひとつとダンボールだけという簡素なつくりですが、その「なにもなさ」が見事に内容と一致していて、箱というイメージから連想されるすべてのキーワードのまわりをぐるんぐるんと大きく旋回しながら、ぱたぱた展開して拡がってゆくその箱は一体全体何面体なのか誰にもわからない誰も教えてくれない。出てくる言葉のひとつひとつが絶妙に箱と関係しているようでいないようで、時々こちらの考えすぎかもとさえ思うこともあるのだけど一旦つながってしまった線はもう切り離せない離れない。結局なにがどうなったのか判断するのは観た本人にしかできず、なぜならヒントに頼ろうと舞台上を探しても箱しか転がっていないのだから。知ったような気になっていた素舞台の奥深さというものを改めて思い知る。