飽きない珍味

味わい堂々 「春を待つ」
作・演出:岸野聡子

@中野あくとれ

 出演しているサンチャゴ吉田氏曰く「演劇界のチャットモンチー」こと、味わい堂々。女性3人によって構成される劇団だから、だなんて、それだけのはずがない。要するにチャットモンチーの『音楽』を『演劇』に言い換えるなら「普通の女の子が普通に演劇をつくって演じている、ただそれだけのことに宿る魔法」を体現している、ということです。
 脚本も演出も、多少の奇抜さこそあれ特に目新しいことは何もしていないはずなのに、目の前に広がるのは見たこともない風景。いや、風景自体も見たことはあるのです、むしろそのほとんどが「どうってことのないシーン」ばかり。ただ、こんな切り取り方があるとは知らなかった。劇団名が指し示すそのものずばり、堂々とした味わいがにじみ出る舞台でした。そうそう、味わいといえば、うまい棒にフライドポテトにハッピーターンに白米にと、女優陣は食べてばっかりだったな劇中で。それも尋常じゃない緩急で。
 終演後、主宰にご挨拶、なんか小道具出したくなったときはご用命くださいと名刺を交わす。とはいえこちらも緊張しているので「よろしくお願いします」と言いたいところを舌先でつんのめって「よろしくおじゃらないっす」とかなんとか言ってしまう。文字に起こしてみて分かったけれど、これじゃ体育会系のお公家様じゃないか。しかも否定形。