一人称はここ

あさかめ 「ここにいたのにいなくなる」
作・演出:児玉洋平

@日暮里ギャラリーHIGURE17-15cas

 ギャラリーやカフェでの公演特有の「一歩踏み入れた瞬間から世界観」な趣向には慣れていたつもりでしたが、建物自体が放つオーラのようなものに圧倒されて入り口で一瞬立ちすくむ。だって屋上にラクダとガンダムが並んで飾ってあるのだ。それでいて扉は日本家屋風だ。どんな世界観だ。
 もしもタイトルが「ここにいたけどいなくなる」だったら観に行かなかったかもしれない。「のに」っていう言葉は何か、ただの逆接だけじゃない『名残惜しさ』とか『諦めの悪さ』とか、そういう感傷の含まれた世にも珍しい「泣かせる接続助詞」だと思うのです。
 終演後、ギャラリーを一歩出た瞬間、まさに自分こそが「ここにいたのにいなくなる」ことを自覚して涙腺がうわーってなったのは、登場人物の誰かじゃなくてギャラリーそのものの視点に感情移入してしまったからかもしれません。はるばる日暮里まで来たから余計にそう思ったのか、それともいつか来るバラシ(撤収)のあとの誰もいなくなったカラッポの空間を想像してしまったからなのか。まあ劇中時間とはいえ8年以上も一緒にいたんだから無理もないか。