声に出して読まれた日本語

モールス歌詞集

モールス歌詞集

 初めて聴いたモールスは「モチーフ返し」ですが、初めて読んだモールスは「トーナメント」でした。その歌詞構成たるや、脳天むしり取られたような衝撃でした。脳天ですよ脳天、頭髪ならともかく脳天むしり取られる機会なんて滅多にあるもんじゃないよ。
 「水没喫茶」「地下天文台」「パンに針」「めまいセロハンごし」「ファンタジーは帰れ」「アニバーサリー欠乏症」と、タイトル列挙するだけで快感がともなう独自のセンスで描き出される、やたら具体的でユーモラスで、どこか寂しげなのに苛立っているみたいな複雑骨折した感触の歌。メロディーと切り離されても全く劣化せずに歌詞単体で成立しているからこそできる、モールスを知らない、あるいはモールスの音楽性が嫌いな人さえも射程範囲に含めてしまう「活字で読めるうた」。