靴が履ければ誰でもよかった

 名前に神がつく演出家ばかり見ている週末の2本目。

COLUMBA 「シンデレラ」
作・演出:石神夏希

@横浜BankART Studio NYK

 ホールというよりは巨大なガレージめいたコンクリート打ちっぱなしの声が反響する空間にて、過去とも現代ともつかぬ新釈シンデレラ。おとぎ話のガラスの靴も現実の手にかかれば23.5cmのコンバースのライムグリーンのスニーカーに。王子様が誰を見初めたか、ではなく靴の所有権は誰にあるのか、へと論点がずれた途端に世界は支柱を失ってグニャグニャと曲がり始めます。が、これはそもそもシンデレラの話じゃなく駐輪場の延滞料金の話だったりもして、いくつもの軸に支えられてクランクみたいにジグザグに回る話の感触を自転車輪のカラカラいう音と不安定な照明が巻き込みながら一路、異空間へ。
 プロポーズの断り方と魔法で開いた扉の先の海の美しさに泣きそうになる。