特別なんかじゃない

キレなかった14才りたーんず 「すご、くない。」
振付・演出:白神ももこ(モモンガ・コンプレックス)

こまばアゴラ劇場

 客入れ中の放送部による「学校で 楽しそうなやつ みんな死ね」という無季俳句に笑いながらも深く頷く。根が暗くない人とはイマイチ仲良くなれない僕には到底他人事じゃない沁みる句でした。
 「キレなかった14才」って言うと特別そうに思えるけれど、「キレた14才」のほうを特別視することで我々はどうにかして普通の生活を手に入れているだけだし、もしかすると本当はあのころ全員が「キレる」可能性を持っていたわけで、「キレた」か「キレなかった」かの差なんてダーツで選ばされたパジェロとタワシ程度の違いしかない。ということを暗黙の大前提とするキレなかった14才(現在26〜27才)の「キレ」が、とんでもない軽快さで吹き荒れているアゴラの鉄筋空間。
 プログラミングされたように規則正しく勝手に動く俳優と、それをなんとか定位置に戻そうと頑張る俳優。こういう「翻弄される一人」が大好きな僕はニコニコしながら前のめりで眺めるのですが、よくよく考えてみたら「チェルフィッチュを妨害するダンス」という破天荒な構成に腰を抜かしそうになる。
 あえてダンサーを使わないダンス公演ってことで、基礎をかじった人間には絶対考え付かないような奇跡が起きるとの白神さんの言葉通り、すごくないのに面白い*1わ、演出の気配がないのにバラけてないわと奇跡的な瞬間の連続。

*1:もちろん「面白い=すごい」ではないんですが、普通は「面白い→けど、すごくない」の順序なので。