水没プリンス

ロロ 「家族のこと、その他のたくさんのこと」
脚本・演出:三浦直之

王子小劇場

 王子小劇場のキャパシティ(「収容人数」ではなく「懐の広さ」と訳して下さい)を遺憾なく発揮して、野外劇かよってほどの清く正しく屋台崩し。
 劇団が他人どうしの寄せ集めなら、家族劇はどんなにリアルにやっても家族ごっこでしかなくて、でもそれを家族劇として見られるなら他人どうしだって家族になれるはず。この乱暴な多段論法で、序盤の不自然なほどギクシャクしたテンポの変拍子が「息子が拾ってきた父親」の不自然さと混ざりあい、「父の死」と「犬の死」が『家族の死』でひとくくりにされたあたりから徐々に淀みなく流れ始めて、あとはもう堰を切ったように。
 「ただ単に俳優を水浸しにしたいだけ」なSっ気と「泥沼の中で生きる家族」のメロウさが両極端に振り切れて、気がつけば野比のび太のような量の涙に膝まで埋まる。