何をもって「静か」とするか

クロムモリブデン 「空耳タワー」
作・演出:青木秀樹

@赤坂RED/THEATER

 『いつものクロム』ってもの自体そんなに明確に定義できない(犯罪の話をするとか? 音がデカイとか?)ところへ、追い討ちのように投下される『いつもと違うクロム』。いつもと違うからには、いつもと違うものを見せられる心の準備をして行ったつもりですが、予測を大幅に振り切ってゆく違い方にキョトンとする間もなく吸い込まれて、気がつけばアア、これは何? クロムじゃないのにモリブデン
 以前「なかよしSHOW」のときにも思ったんですが、青木さんに演劇の中で演劇の悪口を言わせたら右に出る者はいないと思う。そして幸田さんのボディランゲージが狂気の域にまで達していて、あれはなんなんだろう、役としては一番普通の役なのに。いや、普通ってなんだろう。そもそも僕らは何を見に来たんだろう。そんな整頓できない気持ち渦巻く中、MOTHER2のラストシーン※いろいろネタバレするので注意)を見ているような強引さで、ただ空を覆う暗雲だけが不気味に晴れていく。
 あと、とてつもなく個人的な感慨を言うならば、僕が小道具として参加できないのならせめてもう少しつまんなくあってほしかった。それか小道具の無い芝居であってほしかった。完全に嫉妬ですよね。ええ完全に嫉妬です。ストーリーと全く無関係な部分でぐいぐい胸がしめつけられる、というか胃が痛くなる。したいなあ、リベンジ。
 おまけパフォーマンスは東京公演限定でなければならない「赤坂レッドシアターまで足を運んだ人たち」にしか共有できない内輪ネタともいえる内容。そういう屋台崩しなら一度はしてみたいものです。