現代っ子ノーガードで憚る

エビビモpro. 「鬱病のサムシンググレート」
脚本・演出・音楽:矢ヶ部哲

@新宿サンモールスタジオ

 主人公が『売れない漫画家・麻生太郎(同姓同名)』という、必殺の設定で屈折したハートを一気に鷲掴まれる。
 客入れ映像がWiiスポーツ麻生太郎を売れない漫画家呼ばわりし、三島由紀夫を湿ったウインナー呼ばわりし、機材トラブル黙示録、役者の滑舌をいじめ抜くためだけの長い長い固有名詞、本編の途中でポストパフォーマンストーク、などを経てアデランスの提供でお送りいたしましたる120分は、結局うどんで大団円。「鬱病」の読みも意味も子供にはわからないのをいいことに、全編ひたすら躁と滅裂で引っ掻き回される快感。
 そして何より見事なのは、これだけ破壊の限りを尽くしておきながら何の価値観も押しつけてこない、という点でしょう。今が楽しい人には楽しい今が映り、世も末だと嘆きたい人にはうってつけの末法世界が映る。両極端のニーズに答えられる芝居なんて、そうそうないと思うのです。