宙に浮かぶパーティバーレル

バジリコ・F・バジオ 「ヨシザキ、カク語リキ」
原作:福原充則(ピチチ5)/脚色・構成・演出:佐々木充郭

@中野劇場MOMO

 今さら確認するまでもなくバジリコ・F・バジオの名前は藤子・F・不二雄から着想を得ているに違いないのですが(他の由来があったら卒倒するよ僕は)、無理やり共通点を探すなら暴走モード時の藤子・F・不二雄に似ていると言えないこともない。が、今回は違う人の原作なので一概にそうとも言えない。
 それでも、同じパースの舞台の上で人間と人形が対等に会話しているのを目の当たりにすると、臨場感/違和感がまるで違います。3次元と4次元の間にできた亀裂を覗いているような人海戦術オーケストラで、群馬からホノルル、ホノルルから牛丼屋そして月面へと脈絡なく駆け上がるトップギアの果てに待つものは腰砕けどころじゃ済まない、すべての含蓄と教訓を墓の下に埋めるようなファイナルアンサー。
 『さまざまな昆虫をコーラで煮込みたがる子供』を筆頭に、とってつけられたような難役を何役もヒョイヒョイこなす吉田麻生さんに天才を垣間見る。多分あの人は天才女優なんかじゃなくて、ただの天才なんだと思います。よく観察すれば演技プランの持ち合わせが1つしかないのは明らかなのに、どうしてああも飽きることなく見てられるのか。