凡人のロックンロール/東京病患者諸氏に告ぐ

キリンバズウカ 「スメル」
脚本・演出:登米裕一

王子小劇場

 「ガール・スパークス」の感想と重複しますが、登米さんの書く脚本における「田舎」と「東京」の捉え方とか、「田舎」から出てきた「自分」と「東京」に対する距離感とか、そういう要素はダーツ名人かと思うほど的確に僕の心象をザクザク刺してくるのです。ただ僕と登米さんが同年代だからってだけじゃ、ここまでのシンパシーが生まれる理由にはならないと思う。
 さらに、『実力のある脚本家』然とした知的な言動や振舞いといったものを絶対にしないブログとの落差は見る者の首を有り得ない方向へ一旦グキッと傾げさせるのだけど、脚本・演出としての実力は脚本と演出とできっちり見せつけるというメリハリが素晴らしい。
 かれらとぼくらをここに縛りつける「永住禁止条例」という設定は、言ってる内容の無茶苦茶さにもかかわらず、該当者の心の中には異常なリアリティをもって入り込んでくる。なので、僕はもう途中から『面白くて笑ってる自分』と『身につまされすぎて笑えない自分』とに引き裂かれて、見ながらずっと七千転八万倒してました。前作「飛ぶ痛み」がカミソリの切れ味だとすれば、今回はハンマーで鳩尾を殴られたような鈍くて重くて後引く痛み。
 作品としての良し悪しというよりは、いっそ、この作品を無視できるか否定できるくらいの強さが欲しいとは思うのだけど、それを手に入れてしまったら何もかも終わりのような気がするし、うう。参った。