悩みから生まれたバケモノ

ろりえ 「ひばりの大事な布」
作・演出:奥山雄太

@早稲田どらま館

 いつの間にかタイトルから「美空」の2文字が削られていた件の詳細までは知らなくとも諸事情察するに余りありますが、そういう外的配慮はできるのにフタ開けてみれば中味はタブーというタブーを侵犯し尽くしているあたりが抜群のチャームポイント。各方面から怒られるのを覚悟でやってるというか、そもそも目くじら立てる奴はヒネリ潰してやると言わんばかりの殺気にも似た舞台は、そんじょそこらの可笑しな劇団とは(頭の)おかしさのベクトルが根本的に違うのです。
 小道具の片づけ方ひとつで腹抱えて笑ったり、納豆を手づかみで喰らう姿を見て涙がこぼれそうになったり、感情の根拠とか論点がコントロールできなくなる瞬間が何度も何度も訪れる。まるで意味がないように思える個々のエピソードが、終盤になって有機的に…ではなく無機的に結びついてゆく展開なんか、異常を通り越してもはや正常。上演時間130分という長さに隠された無駄な必然性と、前代未聞のカーテンコールを見るためだけにでも足を運ぶ甲斐はある、と思います。