ソフトボイルド/言い逃れの教科書

Aga-risk Entertainment 「死チュエーションコメディ」
脚本・演出:冨坂友

@新宿サニーサイドシアター

 多分このジャンルが発明されたのと同時に誰かが思いついててもおかしくないくらい当然の帰結的なオチではあるんですが、あたりを見渡しても意外なくらい誰もやってないパターンでもあるのです。謎が謎を呼ばないまま勘違いと嘘の上塗りの加速度だけで見せ切る「シチュエーションコメディ」という鬼の体内に入り込み、その内臓を針で突いて退治せんとする一寸法師テロリズム
 あれだけドカンドカン笑っていた客席をクライマックスで一瞬にして静まり返らせた手腕に有無を言わせぬ説得力を感じた、というより、自分もそのリアクションの一部として存在していたので有無を言えなくされたとでもいうか…おそらく脚本だけ読んだら「あー頭いい人が書いたのねー」だけで終わってたかもしれないストーリーが立体で迫ってくる、その瞬間に演劇を僕は見たわけです。
 ひとつだけ難を挙げるなら、最後の展開を無理なく成立させるには『逆の意味で』チケット代が割に合わないってことでしょうか。1800円であのラストは納得いかないよ、せめて6000円は取ってもらわなくちゃ。大劇場嫌いの僕があえて言います、これは青山劇場とか新国立劇場で上演してこそ『最高のシチュエーションコメディ』になる、と。