馬鹿と真面目の図地反転

ポップンマッシュルームチキン野郎 「もう嫌んなるくらいハピネス」
作・演出:吹原幸太

吉祥寺シアター

 小道具が結構とんでもないとの噂を聞きつけ、初見。会場内に入るなり舞台中央でPSPで遊んでるケンタウロスと目が合い、開演前から脱帽。しかし、驚くのはまだ早かったのでした。
 「開演前ずっと舞台上にいたケンタウロスが本編に一切登場しない」だの「死ぬほど不味いラーメンを食べて死んだ人を煮込んだラーメン」だの「記憶喪失の人にワサビを飲ませる」だの、冒頭から完全に針の振り切れたナンセンスの畳みかけ。にもかかわらず、ハチャメチャにしか見えない展開が実は全ての伏線を律儀に拾っていて、終わってみればあんなに散らかし放題の舞台だったのに塵ひとつ残さぬ片付きよう。どこでどう切り返されたのか太刀筋も見えないほど完成度の高い人情喜劇として着地する、まるで居合抜きみたいなその技巧に唸る。