喜劇と悲劇とドアtoドア

電動夏子安置システム 「深情さびつく回転儀」
脚本・構成:竹田哲士/演出:高松亮

@新宿サンモールスタジオ

 ルーレットによって6通りに変わるラストシーン…と聞かされて、構成技術の巧みさよりも僕の興味はむしろ『ぶっつけ本番の6パターンに瞬時に対応せざるをえない役者への負荷』のほうに比重が置かれるのでした。役者とて人の子、器用に振舞うにも自ずと限界は訪れるはず。さあ、そこをどう切りぬけるのか。追いつめられた生身の人間から窮鼠が出るか脱兎が出るか。われながら悪趣味な見方だってのは百も承知で。
 まあ、実際は『6パターンに切り替わる展開』よりも『ルールに翻弄される役者の負荷』のほうにこそ、ずば抜けた見応えを見出だしたわけですが。2時間ぶっ続けでフラッシュ暗算をやらされてるような感覚、とでもいいましょうか。演技力を根本から問いただすSWITCHの理不尽な面白さたるや、表面上はきわめてスタイリッシュに泳ぐアヒルの水面下での本気のバタ足を見たようでした。その合間を縫うようにストップモーション中のふらつき・まばたきなど見てちゃっかり楽しむ。ああなんて意地悪。
 そして特筆すべきは渡辺美弥子さんだ。前々から不思議と気になる演技スタイルの持ち主だったけれど、脈絡なく突如オペレッタ調になるあの発声法は、なんか、いいとか悪いとかじゃなく凄いと思った。