窓の外は死んでいる

the end of company ジエン社 「コンプレックスドラゴンズ」
作・演出:作者本介

@日暮里d倉庫

 たぶん誰しも、作品を作るにあたって「面白い作品」を目指すとは思うんですが、ジエン社の演劇はその大前提を疑うところから始まっています。つまり「そもそも『面白い』は本当に面白いのか?」という視点。
 昔『それでよかったのか?』って名前のバンドが実在して、それが『ネルソングレート』という普通の名前に改名したと聞いたとき、僕は本当に「それでよかったのか?」と思ったものですが、ジエン社は演劇をやりながら演劇に向かって「それでよかったのか?」と問いつづけているのだと思うのです。
 既存の価値観が嫌いで壊したいけど、完全に壊してしまうと結局自分が新しい『既存の価値観』に成り代わってしまうだけだという二律背反と戦いながら、いつまでも異物感として存在し続ける覚悟みたいのをひしひしと感じた。
 一貫して「登場人物全員やる気がない」を前面に押し出すドラマのない筋書きが特徴の作風なのですが、この話を全く先へ転がさない、劇作品を通して誰一人なにも成長しない、なにも得られないし失うものはもうないし生きてるのか死んでるのかさえわからない、ないない尽くしのぬるま湯地獄の底から立ち昇る狼煙のような狂気(と呼ぶのも憚られる、うすぼんやりした何らかの感情)。序盤で完全にアブナイ人扱いで仲間はずれ状態だった人物が、後半で血まみれの包丁持ってヘラヘラ笑っているのに一番まともそうに見えてくる、という異様な逆転に気づいたときにはすでに、この作品の中に取り込まれてしまっているのでした。