バラーミックおっとつ

味わい堂々 「最後の料理人」
作・演出:岸野聡子

@下北沢OFF・OFFシアター

 ついつい忘れがちになるけれど、僕らはべつに演劇史にその名を刻んだり学術的に有意義だったり戯曲賞をもらったりするために演劇やってるわけじゃないし、地位や名誉や権威は『結果』でこそあれ決して『目的』ではない。それでも「売れる」の「売れない」のといった二元論を前に本来の動機や目的を見失いそうになる人は結構後を絶たない甘い罠。
 味わいの三人は、そこんところを絶対に履き違えたりしない(と信じている)。僕が味わい堂々という集団を頑なに全肯定し続ける理由も、おそらく、ほとんどその一点に尽きるといっていい。
 舞台上に散らばった登場人物たちを見ていると、ああ、どいつもこいつも生きてんだなあ、って思うのですね。だからなのか、どんなに意味不明な方角へ舵を切られても振り落とされることはないのです。生きてるだけで笑って泣けるって凄いことだと思う。