線を引けたら

あなピグモ捕獲団 「瞬間キングダム」
作・演出:福永郁央

@池袋シアターグリーンBASE THEATER

 一枚の紙ペラにびっしり書きなぐられた、大学ノートの罫線までくっきり残る濃度でコピーされチラシ束の中に挟まれた主宰挨拶文の、こう、主語から述語まで絶対に最短距離を選ばず寄り道しながら行きつ戻りつ迷走するような、すべての道が通ずるからといって東京―大阪間をわざわざローマ経由で移動するような文体が僕は大好きで、なんだったら今ちょっとそれに影響されながら書いてたりもするんですが、その文体こそあなピグモ捕獲団の演劇のグルーヴそのものだということに開演から80分後くらいで気付く。
 ゲームブックのようにバラバラにナンバリングされた断章を寄り道しながら行きつ戻りつ、何重にも張り巡らされた抽象的で意味深な言葉と、そのところどころに落書きみたいに貼っついた心底どーでもいい悪ふざけが融合した先に現れる世界は、あれは何だろう。わからない、けれど、『わからない』ってことがわかるころには舞台から目を離せなくなっているのだけは確かだ。最後に待ち受けるあの物理的カタストロフの瞬間まで、答えのないなぞなぞみたいな迷路をぐるぐる徘徊する楽しさ。
 第30回記念公演ということで、『キングダム』を『劇団』と読み替えながら観てたらボロボロ泣けたんですけど僕だけでしょうか。