世界の中心で、痰を吐く

犬と串 「BOOKEND」
作・演出:モラル

早稲田大学大隈講堂裏劇研アトリエ

 世にはびこる安易な涙とか感動を強要するメロドラマに、不謹慎という名の刀一本携えて完璧な鋭角で斬り込んでくるナンセンス道場破り。いわゆるPTAの二等辺三角形眼鏡貴婦人たちに観せたなら、全員その場で泡吹いてショック死すること請け合い。
 中途半端に手加減があったなら却って批判も浴びるでしょうが、もはや下ネタが好きとか嫌いとか、差別的表現はよくないとか食べ物を粗末にしてはいけないとか云々以前に、こうも徹底的にやられたんじゃ僕らにできることといったら笑顔で「サイテー!」って叫びながら椅子ごと後ろへぶっ倒れるだけだ。これほどまでの覚悟と殺意をもって笑いに正面から挑める人は貴重だと思うので、どうかこのまま丸くなったりせず突き進んでいっていただきたい。そしてどうか、いつか「おしん」の犬串版リメイクを是非。
 個人的にはVHSテープを引きずり出す人が一番好きでした。琴線にふれるどころか琴線を引きずり出された気がした。