オーガニック・ガールズトーク

ワワフラミンゴ 「骨のない男」
作・演出:鳥山フキ

@渋谷Gallery LE DECO 2

 おもに4階と5階が演劇用スペースとして貸し出されるGallery LE DECOでの、まさかの2階公演。ギャラリー仕様で真ん中からほぼ二部屋に分断された、どこにどう客席を組んでも死角のできるスペースをそのまま使い、しかもそれに違和感も不満も抱かせない空間設計が素晴らしい。
 洋服のボタンを掛け違えても似合ってさえいればファッションと言い張れるように、ワワフラミンゴの会話劇に「ずれ」は必須条件なのです。一歩間違えればあっという間に劇場内がクエスチョンマークで埋め尽くされかねない優雅にして奇天烈な世界観の中、とてつもないバランス感覚で絶妙にすれ違い続ける日常のひとこま。壮大でもなく、ましてや等身大ですらなく、自炊をすると生きてる意味がわからなくなるとか、ケーキがレモンをいじめるとか、机の脚の部分の名前が思い出せないとか、重箱の隅に残って乾燥した米粒を針で転がすような顕微鏡レベルのフェティシズムから立ち上る美意識。あえて近いものを挙げるなら初期の『ぼのぼの』、もしくは性欲のないベターポーヅ
 劇場以外の「窓のある部屋」を上演場所に選ぶことが多い印象なのですが、その窓から見える渋谷の街並とか喧騒とか登退場口のドアに貼られたSECOMの文字などが芝居のリアリティを邪魔するノイズに一切ならず、かといって舞台装置とか借景というほど大それた主張もせず、当たり前のBGMみたいに横たわっている*1姿が素敵すぎて目がくらむ。引っ越してきて間もない部屋の、まだ自分の家とも他人の家ともつかない感触のソワソワと浮わついた静けさ? に似てる。

*1:開演1分前に向かいのオフィスのブラインドが下りるとか、「自炊をやめようと思う」って台詞の直後ファミリーマートの看板に灯りがつくとか、計算されてない奇跡がいくつもあった。