舞台美術はシロクマを殺す

悪い芝居 「最低の夢」
作・演出:山崎彬

王子小劇場

 「露悪趣味が腸捻転を起こしたような」としか形容できない、最盛期の吾妻ひでおをも彷彿とさせる破壊的支離滅裂。一目見たなら向こう五日間は夢に出そうなインパクトの役者陣が、尋常じゃないテンションと常軌を逸した下品さで目に写る風景すべてを片っ端から打ち毀してゆく姿は野性動物そのものです。
 舞台上から「お芝居」が消え失せても、舞台上には「おろおろする人間」が残る。その事実は僕にこの行方知れずな展開を一瞬で「あり」にしました。そして、主宰・山崎氏の切羽詰まったカーテンコールに不思議な人懐っこさを覚えたのも事実。
 前回に引き続き、どこがどう動くのか全く予想もつかない美術のセンスに脱帽。