うしろをごらんよ

ぺピン結構設計 「トンカツであーる」
原作:長新太『つきよのキャベツくん』/構成・演出:石神夏希

@横浜BankART Studio NYK

 トンカツとキャベツとソースの関係性を、比喩で語るとかメタに持ち込むとか、そういったフィルターを一切通さずにそのまま上演する度胸。
 キャベツの葉を頭に乗せたり緑色のシャツを着たり試行錯誤を繰り返すうち、何も細工を施さなくとも自然に役者をキャベツやトンカツとして受け入れられる(キャベツやトンカツに見えてくるわけではない)心の準備が完了するから不思議。そしてトンカツは妻になりキャベツは隣人になり池波正太郎は池波ソース太郎になり、妹はおやつにナフタレンかじって救急車で運ばれる。観てないとさっぱりわからないでしょうけど、なんだか無性にナフタレンが食べたくなってきて困った。
 逆行催眠をかけられたみたいに、いつの間にか背後から追ってくる子供のころの記憶。「何が」って主語を飛ばして「わかった」ような錯覚に陥りますが、答えだと思って掴んだ瞬間すり抜けて何処かへ行ってしまう、あのもどかしさが作る奥行きが果てしなくて目がくらむ。