コミュニケーション実弾射撃

the end of company ジエン社クセナキスキス」
作・演出:作者本介

@日暮里d-倉庫

 廃虚同然のだだっ広い密室に、すきま風が吹いていると思い浮かべてほしい。いちおう窓はある。部屋にはあなた一人しかいない。光は射し込んでくるけど、残念ながら磨りガラスのせいで(磨りガラスではなくて汚れすぎているだけかもしれない)さほど明るくはない。その部屋を現実だと考えていただきたい。
 窓の外には道路が走っていて、ジエン社はそこを通過する自動車のようだ。意味の無さそうなエンジン音が右から左へ通り抜けてって、あたりはまた静かになる。その静けさは車が通る前と何も変わらないはずなのに、心なしか余計に静まりかえっているように思える。それまで特別気にならなかった風の音も、以前より意識にのぼってしまうかもしれない。ジエン社は答えを出さないし問題提起もしない。もちろん勇気を与えたり感涙させたりもしない。ジエン社が終わったあとには現実しか残らない。これはすごいことだと僕は思うんですが、伝わってますか?
 終盤、とあるシーンで役者が客席のほうを向くところがあるんですが、メタ演劇と呼ぶにはあまりにさりげなく、冗談にしてはあまりに鋭すぎるその切っ先に僕の脈拍は急上昇し、喉はからからに渇くのでした。客席を挑発する芝居なら何度か見てきたけど、舞台上よりも客席のほうがリアリティーがないなんて状態にしてしまった芝居はジエン社が初めてなんじゃないだろうか。