謎もないのに謎めく女

ダックスープ 「透明感のある人間」
作・演出:ブルースカイ

@下北沢ザ・スズナリ

 観に行くなら覚悟はしておいたほうがいいと思うので、書きますが、「前売3800円に見合う感動」が欲しくてチケット買ったわけじゃないんです。3800円と引き換えに得られるものは「俺はいったい何を見に来たんだったっけ」という茫漠たる気分。それが真の贅沢ってものでしょう? そして、そんな需要に答えてくれるのはやっぱりこの人しかいない。
 本人にその気がないだろうことは100も承知ですが、もしもブルースカイさんがホラー作品を書いたなら、その恐ろしさは群を抜くんだろうなあと想像したりもする。たまたま今ベクトルが笑いの方を向いているというだけの、あらかじめ底が抜けている鍋の中で煮詰められた悪意のない底無しの悪意。
 山盛りの伏線を惜しげもなくタコ足配線で絡ませダマにした挙げ句、それには一切関係のないクライマックスを迎える。表面的には猫ニャー時代より遥かにおとなしくなってるものの、高水準の演技と教養を「絶対そこじゃない文脈」で大量消費する荒業はグレードアップするばかり。