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ぬいぐるみハンター 「お肉体関係」
作・演出:池亀三太

王子小劇場

 開始早々役者の体力を大きく削るためだけに用意されたであろう『neco眠る』まるまる一曲踊り狂っての強制ランナーズハイ、からの90分間大相撲。「動悸・息切れ」だとか「捻挫」だとか「脳震盪」だとか、そういう身の危険に対してのリアルが劇中のリアルと結びついたとき、現れるものは生身の汗とカーニバル。
 俳優を楽器だとするなら脚本は楽譜だ、みたいな比喩をたまに耳にしますが、その理論でいくと今回の脚本は楽譜よりもアンプであることに徹していたように思えるのです。俳優が喋って叫んで飛んで跳ねて頭打って笑って泣いて、っていう、それだけが際立つような道順を描くために脚本があり、「ここでこの台詞を伝えるには役者が大声を張り上げなければならない」じゃなくて「ここで役者が大声を張り上げるためにはこんな台詞を用意しなくてはならない」による取捨選択がある。だからこそステージごとの役者のコンディションが作品の出来不出来を決定的に左右するハイリスクハイリターンな方法でもあるのですが。
 頭のいい脚本/演出家が作るものってのは往々にして鼻につきやすくて、だからこそ能ある鷹は爪を隠すなんてことが美学とされるんですが、ぬいぐるみハンターの場合は能ある鷹がやぶれかぶれで地表めがけて突進してくるような気迫。決して余裕綽々に才能をひけらかすことなく、生き延びるためだけに全才能を使いきる。