小劇場万博

Mrs.fictions 「15Minutes Made vol.9」
総合演出:生駒英徳

@池袋シアターグリーン・BOX in BOX Theater

  1. ひょっとこ乱舞 『わるぐち』
    作・演出:広田淳一
     面倒な言い争いを回避するためにあえて口汚く振る舞う兄と、煩雑な人間関係を回避するために面倒を背負い込む弟と。ボキャブラリーにだけ頼った罵詈雑言なら痛くも痒くもないけれど図星を突かれると激痛が走る、というお手本のような、いや実際お手本を見せてくれる二人芝居。
  2. 犬と串 『OCEAN〜失われし七つの秘宝〜』
    作・演出:モラル
     二番手ということに全く負い目を見せず「やりたいようにやる」犬と串のポリシーは健在。滑舌と表情と感情を根こそぎ奪い去られた役者陣が、それでも隠しきれない熱量と声量と高速スピンターンで魅せる『ウェルメイド残念演劇』。小道具が折れててこんなに笑ったの初めて。
  3. ナカゴー 『ジョゼたち』
    作・演出:鎌田順也
     肩の力が関節ごと抜けて外れたような芝居として見るもよし、でも、これを「実はみんな20代」って事実を差し置いて「小学1、2年生の会話劇」として見たときの恐るべきリアリティ。なにひとつ会話が噛み合っていないにもかかわらず彼らは間違いなく友達どうしでいられているということに、すでに小学生じゃなくなってしまった僕は憧憬と感動を隠せないのです。
  4. シンクロ少女 『性的人間』
    作・演出:名嘉友美
     二人いれば悲しみは半分だなんてことにはならなくて、三人いれば三倍に膨らんでゆく劣情。ぐるぐる回りつづける文豪の脳内イメージを取り出して晒してみせているのは、しかし作家の女性のほうだという逆転が刺激的。
  5. Defrosters 『漫才』
    作・演出:松本哲也
     妙に漫才の下手な漫才師と、妙に場繋ぎの巧いマネージャーと、妙にかわいそうな異物感としての女子。話としての境目をどこに置くかで後半部の意味合いが全く変わってくるのですが、劇外劇として見ていた僕には後味のざらりとした感触が滲みた。
  6. Mrs.fictions 『僕を寝かさない』
    作・演出:岡野康弘
     怖い話から悲しい話へとスライドしてゆくフィクションズの詩情が炸裂。眠りたいのか起きてたいのかさえ分からないまま果てしなく続く他愛もない会話の中でだけ集まれる仲間とか、飲み物の空きボトルだけが象徴する友達の痕跡とか。懐かしさが澄みきった炭酸の泡のように込み上げてきて不意に泣き出したくなる。15分という長さに一切の過不足がないばかりか、この15Minutes Madeの本質をさらりと言い当てているのも素敵。