世界の間取りから

Aga-risk Entertainment 「みんなのへや/無縁バター」
作・演出:冨坂友

@渋谷Gallery LE DECO 4

 アガリスクの陰と陽(あるいは光と影)(あるいは躁と鬱)。両極にぶっちぎれた作風からなる二つのワンルームマンション。
 典型的なドタバタコメディをスケルトン仕様で見せる『みんなのへや』。説明に無理があればあるほど、よりいっそう豪快な歪みが生じて面白い。そしてやっぱり、見ている途中で頭の中の整合性を追いかけるセンサーが許容量オーバーでパーンとはじけて箸が転げても可笑しいモードへと雪崩れ込む瞬間が、「誰にとって誰が誰で、おれはあいつのあれを知らなくてあいつはおれのあれを知ってて、ってどうでもええわははははは」となる瞬間が見事。
 そして『無縁バター』、ついさっき目の前で証明したにも等しい「シチュエーションコメディは嘘の上塗りと混乱の加速でできている」という理論をごっそり引き算する挑戦には脱帽。一向にたたみかけてこない展開に「これ別にシチュエーションコメディでもなんでもないんじゃ…?」と思わせておきながらも、終わってみれば『笑えて/泣けて/ハラハラして/ひっくり返す』という隙のない四段構えで迎撃されてたことに気付く。