I WAS DAZAI

「Project BUNGAKU 太宰治
原作:太宰治
『HUMAN LOST』 演出:広田淳一(ひょっとこ乱舞)
『燈籠』 演出:吉田小夏(青☆組)
ヴィヨンの妻』 演出:松枝佳紀(アロッタファジャイナ)
人間失格』 演出:谷賢一(DULL-COLORED POP)

八幡山ワーサルシアター

 太宰治の小説を僕が初めて読んだのはいつだったかも、どこで読んだのかも忘れてしまった。文学部を出てるくせに自分から文学に親しんでいったことのない僕のことだから、教科書に載っていたのかもしれない。だけどあんな薄暗い小説、夢も希望もある中高生に読ませちゃ駄目だ。音読と称して生徒を立たせて公衆の面前で「生まれてすみません」なんて言わせちゃ駄目だ。
 そう思っていたのは、とんだ見当違いだった。太宰のやつは意外とPOPだった。にくたらしいほどに。
 ジャンルとして違う「文学」を「演劇」に翻訳するからには、当然その隙間にはロストイントランスレーション状態があるわけで、何を捨てて何をくっつけるか、っていうところが重要。そこに演出家ごとに四者四様の距離感が見えたのですが、トリを飾る『人間失格』の、まるでブンガク的雰囲気に媚びないあの突き放し方はすごく潔かった。気難しい観念を分かりやすく解説するという点では「仏教的に正しい一休さんの歌」に通じるものがあるような気がしたのです。