完全無欠のコミュニケイション

ぬいぐるみハンター 「無邪気で邪気なみんなのうた
作・演出:池亀三太

@参宮橋トランスミッション

 舞台上にいるのは、学級崩壊気味の幼稚園児が15人と大人が2人と反則が1人。子供はうるさいし、すぐギャーギャー泣くし、まじめな話には茶々を入れて先に進ませないし、マトモな会話なんて到底成立するはずもない。しかし、ぐちゃぐちゃに入り雑じったペースト状の騒音にひとたび耳をすませば、あいつとあの子は紛れもなく「会話」しているのです。あれほど誰もが自分のことだけしか考えてないような空間で、誰ひとりとして適当な相槌を打ってるやつはいないのです。それは、なんていうか、奇跡的だとさえ思う。
 ぬいぐるみハンターのスローガン?キャッチコピー?が『可愛く装い、ガブッと噛みつく』ならば、今回ほどその理にかなった演目はなかったんじゃないか。「可愛い」とはつまり「無条件に許されている」ということで、舞台上だけで抱えきれずに決壊して客席まで雪崩れ込んでくる楽しさの前には小難しい理論も理屈も一切が無力。パステルカラーのぬいぐるみたちが大挙して、脳の中にストロー突っ込まれて直接ドーパミンを吸いとられてるような多幸感。