セルゲイ・パラジャーノフ「ざくろの色」

ざくろの色 [DVD]
 正直、アルメニアという地図上の場所さえあやふやな国の、全く知らない監督が撮った映画にここまで引き込まれるとは思っていませんでした。
 とにかく登場人物の大半が無表情、かつカメラ目線。なんかみんな早く帰りたそうな顔。たまに字幕は出ますが、登場人物の誰かが他の誰かに向かって話し掛けるとか、そもそも誰かが口を開くこと自体ほとんどない。で、その無表情なカメラ目線でニワトリを絞め殺したり、水をこぼしたり、20人くらいでリンゴを食べたり、やることなすこと全部が高尚すぎてギャグになっちゃったかのような感じ。最後のほうなんか、主人公の詩人が漆喰を塗ってる男に「死ね」って3回も言われて死んじゃうし。
 そして、ストーリーの説明が最小限すぎて何がなんだかわからないからこそ、細かい動作とか美術に自然と目が行くわけですが、これがもういちいち美しくて。僕はもう途中からダンス公演でも見ているような気持ちになっていました。
 気になって調べてみると相当有名な監督だったみたいです。まだ知らない人は是非。