冷たい地下室のサディスティックメルヘン

 と、そんなわけで「真夏の夜の蛇腹姫」終了しました。
 賛否両論が人それぞれではなくステージごとにキッパリ分かれたり、成島氏をよく知る人たちからの感想でさえ「らしい作品」と「意外な一面」とに分かれたりした今公演。ムラがあると言ってしまえばそれまでなのかもしれませんが、それだけじゃない気がするのは僕だけじゃないのではないでしょうか。考えつく限りの手段で舞台構造と役者精神を遊び尽くしたような演出法だったからこそ、その時ごとの人間的コンディション(眠いとか、いやな事があったとか)が普通の芝居以上に隠しきれずダイレクトに反映された結果なんじゃないかと思うのです。
 さんざん稽古で見て、なんなら見飽きたはずのストーリーの、台本見たから段取りも何も知ってるはずの展開で毎回涙腺がチクチクするなんて有り得ないはず、なのに。何度見ても感情が素通りするのを許してくれないあのシーン。
 個人的には、皆勤参加で気心知れかけてきた仲の中、いい意味で気負わず畏らずにできたのも勝因のひとつかと。まず信頼ありきの険悪演技。もし打ち解けることができていなかったら、あの稽古風景がどんなに辛いものになって、どんなに簡単に破綻してしまっていただろうと思うと震えが止まりません。