ローファイの極み

むっちりみえっぱり 「表へどうぞ」
作・演出:むっちりみえっぱり

@五反田アトリエヘリコプター

 全体を通じて大きなテーマなり物語なりが設定されていて、はっきりとした結末(主人公の願いが叶うとか、人間的に成長するとか)を迎える…芝居とはそうあるべきだ、というような人にとっては、これは面白くもなんともない作品なのでしょう。
 もちろんそういう「感動できる」「教訓のある」作品も必要だけれど、とはいえ、どんなに感動する話を見たとして、数週間も経てばきっと大まかな粗筋以外は忘れてしまうわけですし、だったら「全く意味がわからないけど不思議と脳裏にこびりついて離れないワンシーン」のほうが何倍も価値があるのでは…とか、最近とくにそう思ってしまう。そんな持病持ちに御誂え向きの芝居。点のひとつひとつが重要なのであって、それはいくつ集めても線にならず、なってもすぐ点に戻る。
 たしかどこかで御本人たちがそう呼んでいたのを見た記憶があるのだけど、これは「本気の学芸会」。学芸会なめてかかると痛い目に遭いますよ。小難しい理屈や理論に一切頼らない劇のなんと強力なことか。見たまま以上でも以下でもなく、裏読みも深読みもできない、含蓄も暗喩もどこにもない、『ただそれだけ』の面白さ。