夢そのもの

五反田団 「さようなら僕の小さな名声」
作・演出:前田司郎

こまばアゴラ劇場

 すでにチラシの時点で面白すぎたのだけど、さらにその上、いや、ねじれの位置をゆく作品。
 似ているものを強いて挙げるなら吾妻ひでおの「不条理日記」みたいだった、という友人の感想を受けて行った僕が見たものは、似ているものを強いて挙げるなら笙野頼子の「タイムスリップ・コンビナート」みたいな世界でした。まあ、どちらにもあんまり似ていないのだけど、強いて挙げるなら。
 ほとんど何も考えないで書いたという本人の弁を信じようと信じまいと、その後ろにどんな高尚な哲学的テーマがあろうとなかろうと、そんなことにはなんの意味もないと冒頭で思い知らされる。彼女からプレゼントされた2つの岸田戯曲賞(包装紙は三越)、新宿から夜行バスで8時間/3800円の異国、運転手はリス、キシリトールガムにカレーをつけて食べる異国の人々、花柄のシャツに群がる鳥たち、布団の上で溺死する劇団員、そして世界は蛇の腹の中。前田さんが見た夢を舞台化したようでもあり、じつは舞台のほうが僕の見ている夢のようでもあり。アフタートークでようやく我に返る。蛇の胴体構造にハッとする。